大規模会計事務所の実態調査レポート 2025

/ 公開日:

9. まとめ

本実態調査レポートでは、一般社団法人 会計事務所連携協議会の会員17社を対象に調査することによって、会計事務所の今をデータに基づいた客観的な視点から明らかにすることを目指してきた。

結果的に、世間的によくある会計事務所に関する思い込みを、改めることができたのではないかと考えている。
最後に、よくある思い込みに対し、本実態調査レポートで明らかになった実態をまとめ、本実態調査レポートのまとめとしたい。

よくある思い込み 明らかになった実態
会計事務所は一般に小規模である。 法人化された税理士法人を中心に、役職員数が100人を超える会計事務所も多く、役職員数が1,000人を超え、売上も中堅の上場企業並みの会計事務所も存在する。
会計事務所は税務申告のスペシャリストである。 税務申告は会計事務所の中核的価値ではあるが、顧客ニーズの広がりにより、会計事務所が提供する業務は広く経営コンサルティング業務はもとより、財務アドバイザリーやM&A支援などの専門性の高い業務まで含み、税務申告よりも圧倒的に広いものとなっている。
会計事務所においては税理士資格を有するものだけが活躍できる。 上記のように会計事務所が幅広い価値を提供できるようになったのは、専門職員の活躍あってこそである。
会計事務所と言えば税理士の仕事というイメージは今でも強いが、実際には、専門職員という陰の主役あってこそ成り立っている。
これを反映し、会計事務所では専門職員としてキャリアアップを図ることも可能になっている。
会計事務所の業務は労働集約型であり、全体的に労働環境が厳しい。 総労働時間を分析すると、繁忙期に増えるという傾向はあるものの、残業が多いとは言えない分析結果であった。
また、有給休暇については、全体的に普通にとりやすい環境と言える。
ただし、事務所によるばらつきも大きいことも事実である。
会計事務所では離職率が高い。 会計事務所の離職率は、業種としてやや低めであると解釈できる。
もっとも実際には、個社によって状況は異なる。
会計事務所における待遇は芳しくない。 新卒入社者の年収の平均値が363.3万円、中央値が370万円となり、産業全体の平均を一定程度上回るものと分析できる。
また入社5年目の平均値は629.5万円、中央値は620万円となり、これも一般的な相場を上回るものと考えられる。
会計事務所は皆似たような事業モデルである。 中核業務である税務申告・税務顧問、会計・記帳代行は全社共通であるが、どういった業務に注力するかには独自性がある。
また、職種の構成、新卒中心か/中途中心か、育成方針、ワークライスバランス、報酬体系など、各社それぞれの戦略がある。
DX化やAIの活用が進むと、会計事務所の仕事はなくなる。 記帳業務など定型的な業務は自動化が進むことは間違いがない。
しかしながら、それは脅威ではなく、むしろチャンスと捉えられている。
定型業務はテクノロジーを最大限に活用することによって自動化する一方で、人間には「顧客との関係構築」「経営判断のサポート」など、より高付加価値な業務が求められているという認識は各社に共通している。

本実態調査レポートは、会計事務所17社が良いところも悪いところも実態をさらけ出すことによって初めて可能になった。
回答した17社の皆さんに改めて感謝の意を表したい。
本実態調査レポートが、全国の会計事務所が今後の方向性を考える上で多少なりとも役立つことを願うと同時に、会計事務所で働くことに多少なりとも関心を有している方々の背中を押す材料になることを願っている。

10. 一般社団法人 会計事務所連携協議会について

一般社団法人 会計事務所連携協議会(略称: 会計連、理事長: 本郷 孔洋、事務局所在地: 東京都中央区)は、全国の会計事務所17社が発起人となって、2024年12月25日に正式に設立された。
会計事務所連携協議会は、会員間の積極的な議論と協力を通じ、会計事務所及びその先の顧問先にとってより最適な対応を実現し、会計事務所業界が社会のインフラとしてより大きな価値を提供できるよう、会計事務所間の連携を促進している。

会計事務所連携協議会は、以下の取り組みを行っている。
特に初期においては、会計事務所業界のブランドイメージの向上、および、会計事務所における人材の採用と育成の支援を中心に活動を行っている。

  • 会計事務所業界のブランドイメージの向上
  • 会計事務所における人材の採用と育成の支援
  • 会計事務所業界における最適なテクノロジーの活用方法に関する調査研究
  • その他会計事務所運営に関わる情報交換
  • 税制を含む政策に関する提言策定とその発信

一般社団法人 会計事務所連携協議会 会員一覧(2025年9月1日現在17社、50音順)

  • 税理士法人アップパートナーズ
  • RSM汐留パートナーズ税理士法人
  • AGS税理士法人
  • OAG税理士法人
  • サン共同税理士法人
  • セブンセンス税理士法人
  • 辻・本郷 税理士法人
  • 税理士法人TOTAL
  • TOMA税理士法人
  • トリプルグッド税理士法人
  • 日本クレアス税理士法人
  • 税理士法人Bricks & UK
  • ベンチャーサポート税理士法人
  • 税理士法人松本
  • ミカタ税理士法人
  • 税理士法人 名南経営
  • 税理士法人山田&パートナーズ

E.O.D.

全体の目次
  1. 1. はじめに
    1. 1-1. 調査手法
  2. 2. 会計事務所とは
    1. 2-1. 税理士と公認会計士
    2. 2-2. 個人事務所と税理士法人
    3. 2-3. 有資格者と専門職員
    4. 2-4. 会計事務所と事業グループ
  3. 3. 調査対象会計事務所の基本属性
    1. 3-1. 会計事務所の事業規模
    2. 3-2. 会計事務所の業務
    3. 3-3. 会計事務所のクライアント
    4. 3-4. 会計事務所を構成するメンバー
  4. 4. 会計事務所の総合職の働き方
    1. 4-1. 担当社数
    2. 4-2. 業務の時間配分
    3. 4-3. 勤務形態
    4. 4-4. 労働時間
    5. 4-5. 休日出勤
    6. 4-6. 有給休暇取得率
  5. 5. 会計事務所におけるキャリア
    1. 5-1. 新卒採用と中途採用
    2. 5-2. 未経験者
    3. 5-3. 成長のイメージ
    4. 5-4. 資格取得
    5. 5-5. 研修・教育制度
    6. 5-6. 転勤の有無
    7. 5-7. 離職率
  6. 6. 会計事務所の待遇
    1. 6-1. 新卒入社
    2. 6-2. 中途入社
    3. 6-3. 昇給イメージ
    4. 6-4. インセンティブ
    5. 6-5. 評価制度
    6. 6-6. 福利厚生制度
  7. 7. 他業種との比較
    1. 7-1. 一般企業の経理業務
    2. 7-2. 経営コンサルタント
    3. 7-3. 金融機関
  8. 8. 会計事務所の将来
  9. 9. まとめ(現在地)
  10. 10. 一般社団法人 会計事務所連携協議会について(現在地)